Windows & Ubuntu デュアルブート構築ガイド
開発環境を作る際、Windowsの利便性とLinux(Ubuntu)の強力な開発ツールの両方が欲しい時がありますよね。WSL2も便利ですが、ハードウェアの性能をフルに引き出したい場合や、ネイティブなLinux環境が必要な場合は、デュアルブートが最も確実な選択肢になります。
この記事では、WindowsがインストールされたPCにUbuntuを追加でインストールし、デュアルブート環境を構築する手順を解説します。
Step 1: 事前準備(Windows側での作業)
- データのバックアップ: 外付けHDDやクラウドストレージなどに、消えては困るデータを退避させます。
- 高速スタートアップの無効化:
- コントロールパネル > 電源オプション > 「電源ボタンの動作を選択する」
- 「現在利用可能ではない設定を変更します」をクリックし、「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外して保存します。
- Ubuntu用パーティションの確保:
- Windowsのスタートボタンを右クリックし、「ディスクの管理」を開きます。
- 空き容量のあるドライブ(通常はCドライブ)を右クリックし、「ボリュームの縮小」を選択します。
- Ubuntu用に確保したいサイズ(最低でも50GB=51200MB以上を推奨)を指定して「縮小」を実行します。ここでできた「未割り当て」の領域にUbuntuをインストールします。
Step 2: インストールメディア(USB)の作成
- Ubuntuの公式サイトから、インストールしたいバージョン(例: 22.04 LTS)のISOイメージファイルをダウンロードします。
- 4GB以上の空のUSBメモリを用意します。
- 「Rufus」や「balenaEtcher」などの書き込みソフトを使用して、ダウンロードしたISOイメージをUSBメモリに書き込み、起動可能なインストールメディアを作成します。
Step 3: Ubuntuのインストール
- 作成したUSBメモリをPCに挿したまま再起動します。
- PCの起動時(メーカーロゴ画面)に特定のキー(F2, F12, Delなど、メーカーによって異なります)を連打してBIOS/UEFI設定画面を開きます。
- Bootメニューから、USBメモリの優先順位を一番上に変更して保存・再起動します。
- GNU GRUB画面が表示されたら「Try or Install Ubuntu」を選択します。
- Ubuntuのインストーラーが起動したら、「Ubuntuをインストール」を選択します。
- キーボードレイアウトやWi-Fiの設定を進めます。
- インストールの種類(最重要):
- 「Windows Boot Managerとは別にインストール」という選択肢が出た場合は、これを選ぶのが一番簡単です。
- 出ない場合、または手動で設定したい場合は「それ以外」を選択します。Step 1で作った「空き領域(未割り当て)」を選択して「+」を押し、マウントポイントを
/(ルート)、利用方法を「ext4ジャーナリングファイルシステム」にしてパーティションを作成します。
- あとは画面の指示に従ってタイムゾーンやユーザー名、パスワードを設定し、インストールが完了するのを待ちます。
Step 4: インストール完了後
インストールが完了して再起動を促されたら、USBメモリを抜いてからEnterキーを押します。
次回の起動時からは、黒い画面(GRUBブートローダー)が表示され、Ubuntuを起動するかWindowsを起動するかを矢印キーで選択できるようになります。
無事にUbuntuが起動したら、コマンドページにまとめたセットアップ手順に沿って、環境を整えていきましょう!
Step 5: 最初にやるべき「インストール直後チェック」
Ubuntuが起動できたら、まずは「ちゃんと2つのOSが起動できる状態か」を確認し、次に更新・ドライバ・時刻の3点を整えます。ここを先に固めておくと、後から起きるトラブルの確率が下がります。
- ブート確認: 再起動してGRUBからWindowsも起動できるか確認(動くことを先に保証する)
- 更新: Ubuntuのパッケージを最新化(初回は更新が多い)
- ドライバ: GPUやWi‑Fiなどが正常に動くか確認(特にNVIDIA搭載機)
- 時刻: WindowsとUbuntuで時刻がずれる場合は設定方針を決める
更新は以下が基本です。
sudo apt autoremove -y
補足: 初回はカーネル更新が入ることがあり、再起動が必要になります。更新後は一度再起動して動作確認するのがおすすめです。
Step 6: UEFI / セキュアブート / BitLocker の落とし穴
デュアルブートで詰まりやすいのが、UEFI設定や暗号化関連です。特に最近のPCでは「UEFI + GPT + セキュアブート」が標準で、Windows側にBitLocker(デバイス暗号化)が有効なこともあります。
- UEFIモードで統一: WindowsがUEFIで入っている場合、UbuntuもUEFIでインストールする(混在すると起動が不安定になりやすい)
- セキュアブート: Ubuntu自体はセキュアブート対応ですが、NVIDIAドライバなどで追加の手順が必要なケースがある
- BitLocker/デバイス暗号化: パーティション操作の前後で回復キーが求められることがある。必ず回復キーを確認・保管してから作業する
注意: ここはPCのメーカー・設定で分岐が多い領域です。確実に進めるなら「現状がUEFIか」「暗号化が有効か」を事前に確認しておくのが安全です。
Step 7: パーティション設計(おすすめの考え方)
「とりあえず未割り当てに入れる」でも動きますが、長く使うほどパーティション設計の影響が出ます。基本方針は以下です。
- 最小構成: ルート(
/)だけ作る。手早く始めたい人向け - おすすめ構成: ルート(
/)とホーム(/home)を分ける。OS再インストール時にユーザーデータを残しやすい - Swap: 最近は「スワップファイル」が標準ですが、メモリが少ないPCやハイバネーションを使う場合は方針を考える
容量の目安は用途次第ですが、開発用途なら / は30〜60GB以上、/home は作業データに応じて確保しておくと後悔しにくいです。ROS2/シミュレータ/コンテナなどを扱う場合、キャッシュやイメージで容量が増えやすい点にも注意してください。
Step 8: Windows と Ubuntu のデータ共有(安全にやる)
デュアルブート環境では「両方のOSから同じデータを触りたい」ニーズがよく出ます。ただし、Windowsの高速スタートアップが有効だと、NTFSが「休止状態」扱いになってUbuntu側から安全にマウントできないことがあります(Step 1で高速スタートアップを無効化した理由のひとつです)。
共有のやり方は大きく2つです。
- 専用の共有パーティションを作る: exFATなどで共有用に切っておく。シンプルで事故が少ない
- Windowsパーティションを読む: 便利だが、休止状態/暗号化/権限の影響を受けやすい
運用のコツ: “共有したいもの” と “OSが管理する領域(C:\WindowsやProgram Files等)” は分けて考え、共有は作業フォルダ(例: D:\work)に寄せるとトラブルが減ります。
Step 9: よくあるトラブルと対処の方針
デュアルブートのトラブルは「起動できない」「片方が出ない」に集約されます。焦ってパーティションを触る前に、状況を整理してから対処しましょう。
- GRUBが出ない: UEFIの起動順でWindows Boot Managerが優先されていることがある。BIOS/UEFIのBoot Orderを確認
- WindowsがGRUBに出ない: インストール時の検出に失敗している可能性。Ubuntu起動後にGRUB設定の更新が必要なケースがある
- 起動後にWi‑Fi/GPUが不安定: まずはアップデート後の再起動、次にドライバ確認。NVIDIA搭載機は特にドライバが影響しやすい
- 時刻がずれる: WindowsとUbuntuでハードウェアクロックの扱いが異なる場合がある。どちらに寄せるか方針を決めて設定
補足: 具体的な復旧手順はPC環境で差が出ます。最優先は「データを守る」ことなので、状況が不明なまま操作しないのが安全です。
Step 10: 運用チェックリスト(安定して使い続けるために)
最後に、デュアルブート環境を安定運用するためのチェックリストです。インストール直後に一度だけでも確認しておくと安心です。
- 再起動して「Ubuntu → Windows」「Windows → Ubuntu」どちらの経路でも起動できる
- 高速スタートアップが無効になっている(Windows側)
- 重要データのバックアップ経路がある(外付け/クラウド)
- Ubuntuで
apt update/apt upgradeを行い、更新後に再起動している - Wi‑Fi / Bluetooth / GPU / スピーカーなど、最低限のデバイスが期待どおり動く
- 共有データの置き場所(共有パーティション or 作業用ドライブ)が決まっている
ここまで整えば、あとはUbuntu側のセットアップを進めるだけです。開発用途なら、次は Ubuntuセットアップのコマンド集 を実行して、ツール類を整えていきましょう。
Step 11: Windows Update後にUbuntuが起動しない(出ない)とき
デュアルブートで地味に多いのが、Windows Update後に「いきなりWindows直起動になってUbuntuが選べない」パターンです。多くの場合、Ubuntuが消えたわけではなくUEFIの起動順(Boot Order)がWindows Boot Manager側に寄っただけです。
- まず疑う: BIOS/UEFIのBoot Orderで Windows Boot Manager が優先になっていないか
- 次に確認: UEFIのブートエントリにUbuntuが残っているか
Ubuntuに起動できる場合は、UEFIのエントリを確認できます(確認だけなら安全です)。
補足: Boot Orderの変更は環境差が大きく、誤ると起動不能リスクがあります。操作が不安な場合は、UEFI画面での手動確認を優先してください。
Step 12: GRUBにWindowsが出ない/エントリが更新されない
Ubuntuは起動できるのに、GRUBにWindowsが出なかったり、起動エントリが更新されないことがあります。まずは「GRUB設定の更新」で解決するケースが多いです。
sudo update-grub
grub-install やパーティション操作は影響が大きいです。データ保護を最優先し、作業ログを取りながら慎重に進めてください。
補足: 起動不能レベルの場合は、Live USBからの復旧(chroot等)になることがあります。無理に続行せず、状況をメモしてから調べる/相談するのが安全です。
Step 13: 開発機としての運用(更新・バックアップ・容量)
デュアルブート環境は「一度作って終わり」ではなく、運用で安定度が決まります。開発用途では特に、更新とバックアップ、そしてディスク容量の監視が重要です。
- 更新の習慣: たまにまとめて更新すると差分が大きくなりがち。小さくこまめに
- バックアップ: “消えると困るもの” をWindows側/Ubuntu側のどちらに置くか決め、バックアップ経路を固定する
- 容量監視: Dockerやビルド生成物でディスクが急に減ることがある(開発用途の落とし穴)
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
sudo apt autoremove -y
# 空き容量(Ubuntu)
df -h
このあたりを“ルーチン化”できると、デュアルブートは開発機としてかなり強力になります。
Step 14: 既定OSとタイムアウト(起動選択を快適にする)
毎回GRUBで選ぶのが面倒な場合は、既定で起動するOSとタイムアウトを調整すると快適になります。Ubuntu側から設定できます。
sudo nano /etc/default/grub
よく触る設定項目の例は以下です(環境により最適値は変わります)。
GRUB_TIMEOUT_STYLE=menu
GRUB_TIMEOUT=5
GRUB_DEFAULT=saved
GRUB_SAVEDEFAULT=true
編集後はGRUB設定を更新します。
注意: 設定値を誤ると起動メニューの動作が変わります。変更前にファイルをバックアップし、少しずつ調整するのが安全です。